2020/08/13 12:30

木にとっては正常な成長とは、まっすぐ年輪が均等に成長するような木目だと思うのですが、自然は厳しく、毎年の寒暖差や日射時間、虫による触害、隣の樹との接触などなど、自然の中で日夜「生」が営まれているわけです。それが本来の自然の姿で、まっすぐ伸びる年輪を望むのは人間のエゴかもしれません。

傷や病気によって細胞などがまっすぐ成長しない、また傷をふさぐかさぶたのような状態の場所が大きく成長していくと瘤状の盛り上がりができて、ここに極めて面白い木目が現れ、これを趣として珍重するようになりました。そしてその杢目に名前を付けたりしていいるわけです。

その中でも泡瘤と言われるところが最高級と言われ、極端に高価に取引されます。流通量が極端に少ないため、小さなものでも数千円~数万円。数十万円~数百万円、大きなものに至っては1000万円を超えます。金の取引のように1グラムあたり〇円のような基準がなく、自然の物なので、規格品とか木目の方向、グレードとかもないので、商品の大きさや杢目の良し悪しと合わせて、制作者の判断基準による値付けがされます。私らが材料を購入する際、林野庁が主催するセリというものに参加し入札して購入する、あるいは業者間での売買などで入手します。中には貰うとか拾うとかいろいろな経路がありますが、出所のわからない材料を屋久杉と称することは私ら屋久杉業者は控えています。

セリで落札した物には、屋久杉の証である大きな『屋久杉』の焼き印が、林野庁の責任において押されています。これがブランドと言われるもので、google翻訳でブランドを入力すると「焼き印」と訳されます。このセリで落札したもの、支払金額は税金として納められることになります。ですから私ら屋久杉業者は屋久杉材料と引き換えに納税していることになります。なので出所のわからないものや拾ったものを屋久杉と称して売る人や作家に嫌悪感を抱くわけです。お前ら少なくとも『納税』しろ。とか正規ルートの材料を買って作れよと心の中でつぶやくのです。せいぜい趣味で作品を作る人ならまだしも、趣味が高じてだんだんと利益を追求したりや生業とするなら、少なくとも我々と同じ屋久杉業者として土俵に立ってほしいです。趣味で作る人たちは売れると一喜一憂するので、破格の値段で売ります。原価なんて度外視で売れればうれしいという時期があります。実際私もそうでした。私も趣味の延長から始まり、少し売れて小遣い程度でも本当に嬉しかったのですが、業者から材料を買い、セリに参加するようになり、破格の安値で売るのは商売じゃないと気付いて今に至ります。

今回は屋久杉というブランドについて書かせて頂きました。